■許容値-公差表示

 

1

 

1-1

 

1基本原則

1-1独立の原則

個々に指定した寸法及び幾何特性に対する要求事項は、それらの間に特別の関係が指示

されない限り、「独立に適用」する。

それゆえ何も関係が指定されていない場合には、幾何公差は形体の寸法に無関係に適用

し、幾何公差と寸法公差は関係のないものとして扱う。

なお、寸法と幾何特性との間に相互依存性に対する要求がある場合は、下記の方式を用

いる。

1)包絡の条件

2)最大実体公差方式

3)最小実体公差方式

但し、最大実体公差方式及び最小実体公差方式は、嵌り合う部品対における公差方式にて

部品単品での受入れ検査が困難である。

したがって、これらの方式は保守を含める受入れ部品単位内、及び製品部品外(冶具等)の

みには適用させてよいものとするが、互換性の面から「製品の受入れ部品単位での適用は

不可」とする。

1-2図面の完全性

図面には、部品の機能を完全に検査するために必要な寸法公差及び幾何公差を指示しな

ければならない。

但し、プラスチック成形部品については別途とする。(「JISK7109プラスチックの寸法

許容差の決め方」参照)

1-3幾何公差

1)形体公差

機能的な要求がある部分には、形体の幾何偏差を定めるために、一つ又はそれ以上

の特性に公差を指示する。

形体の幾何偏差がある種の公差によって定められる場合には、ときとしてこの形体の

別の偏差がこの公差によって規制される。

形体の「位置公差」は、この形体の位置偏差、姿勢偏差及び形状偏差を規制するが、

「姿勢公差及び形状公差」によって、位置偏差を規制することは出来ない。

形体の「姿勢公差」は、この形体の姿勢及び形状偏差を規制するが、「形状公差」に

よって、姿勢偏差を規制することは出来ない。

形体の「形状公差」は、この形体の形状偏差だけを規制する。

2)データム

データムに関連した形体に指示した幾何公差は、データム形体自身の形状偏差は、

規制しない。

データム形体に対して、形状公差は指示してもよい。

JMDT03013/9

2寸法公差表示

2-1長さ寸法

1)許容限界の記入方法

「寸法許容差による方法」を原則とする。

但し、上下の寸法許容差を必要としない特定の箇所(角又は隅の面取り及び

丸み、隙間等)に限り、「片側許容限界寸法による方法」を用いてよいものとす

る。

例)R0.3max

なお、はめあい公差方式を用いる場合においても、寸法公差記号による方法

とせずに、寸法許容差による方法とする。

2)寸法許容差の記入順序

上の寸法許容差を上の位置に、下の寸法許容差を下の位置に書く。

但し、上下の寸法許容差が基準寸法に対して対称の場合は適用外とする。

例)

30+0.1

-0.2

3)寸法許容差の記入方法

3-1)二つの寸法許容差を示す場合

小数点以下の桁数を揃えて記入する。

但し、寸法許容差の一方が零の場合は除く。

例)

30-0.020

-0.041

3-2)いずれか一方の寸法許容差が零の場合

数字「0」で示す。

例)

300

-0.2

3-3)上下の寸法許容差が対称の場合

寸法許容差の数値を一つだけ示し、数値の前に「±」の記号を付ける。

例)

30±0.1

2-2角度寸法

1)許容限界の記入方法

長さ寸法の許容限界の記入方法の規定を同等に準用する。

2)単位表記

許容差は勿論のこと、角度の基準寸法及びその端数の単位(分及び秒)は必ず

記入する。

例)0°0′30″

JMDT03014/9

3幾何公差表示

3-1幾何特性記号

公差の種類特性記号データム指示

形状公差真直度否

平面度否

真円度否

円筒度否

線の輪郭度否

面の輪郭度否

姿勢公差平行度要

直角度要

傾斜度要

線の輪郭度要

面の輪郭度要

位置公差位置度要・否

同心度(中心点に対して)要

同軸度(軸線に対して)要

対称度要

線の輪郭度要

面の輪郭度要

振れ公差円周振れ要

全振れ要

3-2公差記入枠

1)記入枠

要求事項は、二つ又はそれ以上に分割した「長方形の枠」の中に記入する。

これらの区画には、左から右へ次の順序で記入する。

・「幾何特性記号」

・寸法に使用した単位での「公差値」0.1

この値は、公差域が円筒形又は円で

あるならば記号「φ」を、公差域が球0.1A

であるならば記号「Sφ」をその公差

値の前に附記する。φ0.1A-B

・関連形体公差の場合の「データム文字

記号(アルファベット大文字)」

JMDT03015/9

2)データム指示

設定条件新表記旧表記

A

単独形体

一つのデータム文字記号を用いる。

A-BAB

二つの形体

ハイフンで結んだ二つのデータム文字記号を用いる。

ABCABC

複数の形体

データム文字記号にて、形体の優先順位に左から右へ、

別々の区画に指示する。

3)公差に対する補足指示

3-1)公差を二つ以上の形体に適用

記号「×」を用いて形体の数を公差記入枠6×

の上側に指示する。

但し、寸法指示において数が指定されて

いる場合は除く。

3-2)公差域内にある形体の形状の品質を指示

公差記入枠の附近に、その内容を附記す

る。中高不可

3-3)一つの形体に対して、二つ以上の公差を指定

公差指示は一つの公差記入枠の下側に

もう一つの公差記入枠を設けて示す。

なお、複数の公差指示に矛盾があっては

ならない。

JMDT03016/9

3-3指示線

1)線

公差記入枠の右側又は左側から引出した「矢印線」

によって、公差付き形体に結び付けて示す。

2)指示の種類

2-1)線又は表面自身に公差を指示

・形体の外形線上

・形体の外形線の延長線(寸法補助線)上

但し、寸法線の位置と明確に離さなければならない

2-2)寸法を指示した形体の軸線又は中心平面、もしくは一点に公差を指示

・寸法線の延長線上が指示線になる様に指示する

3-4データム表示

公差付き形体に関連付けられるデータムは、「データム文字

記号(アルファベット大文字)」を用いて示し、正方形の枠で

囲んだデータム文字記号を、塗り潰した「データム三角記号」

とを結んで示す。

JMDT03017/9

4特別の関係を指示する表示

補足事項或いは寸法と幾何特性との相互依存性を必要とする場合は、次の表示方法による。

4-1附加記号

指示区分記号表記方法表示例

補足事項姿勢及び位置偏差に対する

理論的に30基準の寸法を枠で囲む。30

正確な寸法記号の数字は、「寸法値」を

示す。

全周(輪郭度)指示線に○印を附記する。

自由状態○F

附加記号を公差値の後に、

0.1○F

(非剛性部品)附記する。

附加記号を公差値の後に、

0.1○P

突出公差域○P

附記する。

と共に突出し部の寸法の頭○P

30

にも附加記号を附記する。

共通公差域CZ附加記号を公差値の後に、

0.1CZ

附記する。

相互依存性附加記号を寸法公差の後に

30+0.10.1○E

包絡の条件○E

附記する。(形状偏差を規制0

することが出来る)

最大実体○M

附加記号を公差値、データ

ム文字記号、又はその両方

の後に附記する。

0.1○M

公差方式

最小実体○L

0.1○L

公差方式

4-2指示事項の内容

1)理論的に正確な寸法

二つ以上の位置偏差に対する基準長さ寸法、又は姿勢偏差に対する基準角度寸法

の指示。

2)全周

輪郭度特性を断面外形の全てに適用する場合(線の輪郭度)、又は境界の表面全て

に適用する場合(面の輪郭度)の指示。

JMDT03018/9

3)自由状態

自由状態で図面上の寸法公差及び幾何公差を超えて変形する部品(非剛性部品)

の指示。

指示された幾何公差は、自由状態で保証されなければならない。その他の指示なき

幾何公差は、注記で指示した状態のもとで適用する。

(詳細は「JISB0026製図-寸法及び公差の表示方式-非剛性部品」参照)

4)突出公差域

部品図における組立状態の突出し部の姿勢又は位置偏差の指示。

この指示は、後の組立品としての規制の情報であるため、部品図にてこの指示をし

た場合は、必ず組立図にも同等の姿勢或いは位置公差を指示しなければならない。

5)共通公差域

幾つかの離れた形体に対して、一つの公差域を適用する場合の指示。

6)包絡の条件

単独形体、つまり円筒面、及び平行二平面によって決められる一つの形体に対して

適用する。

この条件は、形体がその最大実体寸法(形体の何処においても、その形体の実体が

最大となる様な許容限界寸法)における完全形状の包絡面を超えてはならない場合

の指示。

7)最大実体公差方式

公差付き形体に対する実効状態(図面指示によってその形体に許容される完全形

状の限界であり、この状態は最大実体寸法と幾何公差との総合効果によって生ず

る)を超えないことを、そして、もしデータムに対しても指示されるならば、データム形

体に対する完全形状の最大実体状態を超えないことを要求する指示。

この公差方式は、軸線又は中心平面に適用し、寸法と幾何公差との間の相互依存

関係を考慮している。

即ち、はまり合う部品の実寸法が両許容限界寸法内で、それらの最大実体寸法に

ない場合には、指示した幾何公差を増加させても、組立てに支障を来たすことがな

い。(詳細は「JISB0023製図-幾何公差表示方式-最大実体公差方式及び

最小実体公差方式」参照)

JMDT03019/9

8)最小実体公差方式

対象とする形体がその最小実体状態から離れる時に、指示した幾何公差を増加さ

せることが出来る場合の指示。

(詳細は「JISB0023製図-幾何公差表示方式-最大実体公差方式及び最小

実体公差方式」参照)

5適用するJIS

JISISO規格名称

JISB0021:98ISO/DIS1101製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式

-形状、姿勢、位置及び振れの公差表示方式

JISB0022:84ISO5459幾何公差のためのデータム

JISB0023:96ISO2692製図-幾何公差表示方式

-最大実体公差方式及び最小実体公差方式

JISB0024:88ISO8015製図-公差表示方式の基本原則

JISB0025:98ISO/DIS5458〃-幾何公差表示方式-位置度公差方式

JISB0026:98ISO10579〃-寸法及び公差の表示方式-非剛性部品

JISZ8318:98ISO406〃-長さ寸法及び角度寸法の許容限界記入方法